初雁の頃の伊豆沼のマガンの「雁が音」を聞きにユルポタしてみた。
小夜中と 夜は更けぬらし 雁が音の 聞こゆる空に 月わたる見ゆ
春を告げる鳥は鶯ですが、
天高く月が輝く中秋の名月の頃に、秋告げ鳥としてV字編隊の「雁行」をなして飛来する、古今和歌集の頃から日本人に特に印象深かった渡り鳥が雁ですが、
昨年暮れ前の11月。
宮城県栗原市と登米市にまたがり、日本の音風景100選にも選ばれている、雁列(がんれつ)をなして一斉に飛び立つ伊豆沼のマガンの羽音と鳴き声を聞きに、愛車のCITY-Xで、伊豆沼周辺をユルポタしてみた時の動画から。
初めての伊豆沼で撮影ポイントもよくわからずiPhone SEで撮影したものをつないだものですが、
早朝、まだ薄暗い日の出前の5時39分過ぎにはちらほらとマガンが飛び立ち始め
2018年11月5日の日の出は6時6分。
日の出と前後して近隣の田んぼの餌場を求めてマガンがあちこちから一斉に飛び立ちました。
雁はその名のごとく「グヮングヮン」とか「カリカリ」と心に染透るように鳴くからという説がありますが、実際聞いてみると「ウ〜〜〜ん。どうかな〜〜?」とう感じもありますが、
今回初めて、日本のマガンの8〜9割が飛来する伊豆沼に行ってみて、マガンって、寝ぐらの沼で多くの雁が、一晩中、あちこちで甲高い声で鳴いているのですが、一晩中鳴いてる寝ぐらでの声は、確かに「カリカリ」と聞こえなくもなく
その整然と空を渡る姿は「天つ雁」として神々しささえ感じさせますね〜〜。
宿泊したのは、伊豆沼のマガンや白鳥ウォッチにはうってつけの伊豆沼のほとりの高台に立つ伊豆沼交流センター(伊豆沼ウエットランド交流館)で、建物や駐車スペースから、伊豆沼全体や、朝の飛び立ちや寝ぐら入りするマガンの群れが見渡せます。
ところで、宿で出会った伊豆沼に10年程通われている方の話だと、
マガンの一斉飛翔は、
冬場より、マガンが飛来したばかりの時期の方が一斉に飛び立つんだそうで、冬場は家族単位でのまばらな飛立ちも多くなるそうな。
しかも、近年は一斉飛立ちの時期が年々早まっているとの情報が。
これはどういうことなんだろうと? 私なりに考えてみると、マガンの食糧事情によるものではないのかなと。
狩猟などにより一時は絶滅まで危惧され、激減したマガンですが、
近年では、伊豆沼のマガンの飛来数は増加の一途をたどり、
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo/60/1/60_1_52/_pdf
今年はついに、宮城県内のガン類の飛来数は24万羽を突破。
マガンの餌になるのは、コメの収穫後の落ち籾や、コメの転作で増えた落ち大豆と、麦の若葉や若芽だそうで、
コメ収穫後の落ち籾は、コメの刈り取り方法が、バインダーから落ち籾率が高いコンバインに変わることで餌が増えたことと、警戒心の非常に強いマガンにとって、伊豆沼という安全なねぐらが近くにあったことで、伊豆沼のマガンは急増したようですが
とはいえ、落ち籾や、落ち大豆も無尽蔵ではなく、収穫後の落ち籾は1ヘクタールあたり65kg、落ち大豆は1ヘクタールあたり360kgぐらいの量だそうですが、マガンの1日の食糧が1日あたり100gとすると、1万羽で必要な食糧は1日で1トン。
20万羽だと1日で20トンの餌が必要で、農地面積にすると1万羽で1日15ヘクタール。20万羽だと1日で360ヘクタールの面積の田んぼの落ち籾が必要で、上の表で引用した宮城県北部でのマガンの食糧資源量が2,500トンとすると1日、20トンの餌が必要だとすると、4ヶ月ちょいで食い尽くしてしまう量で、現在、伊豆沼に来ているマガンが越冬に必要な量とほぼ同じ規模で、そろそろ、伊豆沼で越冬できるマガンの許容量は、限界に等しいのかな???
高い山脈があると、時には高度9000mの上空にまで舞い上がり、数千キロも旅するマガンにとって、旅立ち前に十分なエネルギーを蓄えられないと、その後の渡りは命取りにもなりかねず、また、1箇所に大量の鳥が集まるのは病気の大発生にもつながりかねず、本来は、あまり好ましいことではないとは思いますが(といっても、他に越冬できる場所が日本にあまりない現状では仕方ないのでしょうが)
ということで、あくまで私の勝手な想像ですが、
マガンの餌場という観点で見ると、マガンが飛来した当初は近所の田んぼに飛んでけば餌が取れたのが、だんだん遠くの田んぼまで飛んでいかないと餌が取れなくなり、落ち籾が少なくなると、コメの収穫の後から始まる転々と存在する大豆畑(下の写真で緑色の水田の中にある茶色いマス目が大豆だったり麦畑だったりします)に餌場が変わり、
飛んでく方向と、餌場が広範囲に分散するので、
冬場より、マガンが飛来したばかりの時期の方がマガンの一斉飛び立ちは起こりやすい
というのは、あながち本当なのかもしれませんね〜〜?
と勝手な想像をしてみましたが、
望遠のないサイクルナビゲーションがわりのiPhone SEしか持っていかなかったので、朝焼けや夕焼けの中の圧巻の伊豆沼のマガンの旅立ちは写せませんでしたが、
隣の長沼には
手作り感覚の『長沼温泉ヴィーナスの湯』もあり、のんびりゆったり長閑かな田舎の田園風景のなかをユルポタしてまいりました。